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【会員訪問】 内藤時計店
2026.09.30港本町に刻む、まごころの修理史
港本町に店を構える「内藤時計店」。同店は、1962年に創業してから半世紀以上にわたって地域の「時」を守り続けてきた。店主の内藤氏は御年90歳。今も現役でお客様の大切な時計を手入れしている。今回は内藤氏に、この地で長年親しまれている時計職人としての職人人生を伺った。
■住み込み修行から、裸一貫の独立
新城市(旧鳳来町)に生まれた内藤氏が時計職人の道を歩み始めたのは、中学卒業後の10代半ば。「手に職をつけたい」という思いから、親戚の縁を頼り新城市(旧鳳来町)の時計店に住み込み見習いとして修業を始めた。店で寝起きし、掃除や食事の支度などをこなしながら、ひとつずつ技術を習得していく日々。自ら研究を重ね、夜も寝る間を惜しんで仕事に打ち込む生活を10年続け、20代半ばで独立を決意。裸一貫で飛び出し、半田市南本町で、およそ間口1間の軒下を借りて「内藤時計店」が始まった。
■港本町に店を構えて55年
南本町で開業して10年ほど経った頃、タイミングや人との縁が重なり、現在の港本町へと移転した。そこから約55年。内藤氏は、道路拡張による建て替えや、沿線工事による環境の変化など、この町の変遷を語ってくれた。移転当時の周辺の様子を尋ねると、油屋・肉屋・八百屋・縄屋・下駄屋・酒屋・豆腐屋…今ではもう無くなってしまった店がたくさん挙げられた。「地元の人が生活に必要なものを調達できるほどには賑わっていたけど、だんだん時代が変わるとともに変わってきちゃったね。」と言う。
■儲けよりもお客様の喜び
見知らぬ土地に開業してから、内藤氏が店を続けてこられた理由は、「お客様の要望に応える」そして「一人一人のお客様を大切にする」ことだ。開業当時、市内には15店余りの同業店があり競争が激しかったため、名前を知られるまで少し時間がかかったと言う。しかし徐々に親切と丁寧さが認められ、固定客が増え、同業者間でも認められ長く続けることが出来たのである。「大儲けしようとかそういうのは無しに、利益を少なくしてでもお客様に喜んでもらうことを大切にする。」それが、内藤氏が長年変わらず貫いてきたスタイルだ。
職人人生を振り返り、自分の店を持ててこの年齢まで続けてこれたことが満足であることと、お客様への感謝を語る。大病を患い、2ヵ月以上休業したこともあった内藤氏。その際、多くのお客様が待っていてくださったことには「本当に感謝でした。今でも忘れがたい思い出です。」
同店は「生活さえ出来れば、60年以上やらしてもらった感謝ということで。」と、今でも電池交換を700円で行っている。安かろう悪かろうではなく、単に安く提供するということでもない。これまで支えてくれたお客様への感謝を、仕事を通じて返していくのである。
■「命ある限り続けたい」
今回の取材を通して、印象的だったのは「命ある限り続けたいと思っています。」という言葉だ。裸一貫で独立してから64年の間には、きっと大変なことや苦しい時期もあったことだろう。しかし、これまでのことを振り返る内藤氏の言葉の端々には、お客様への感謝の気持ちが溢れていた。「命ある限り続けたい」という言葉には、そういった内藤氏の温かい気持ちが詰まった言葉だと感じた。生涯現役。内藤氏はこれからも、この町で時計とお客様と向き合い続けていく。
(取材:大島菜乃)
【住所】半田市港本町2-72 【代表者】内藤忠二
【営業時間】900~18:30 【定休日】不定休
【TEL】 0569-21-3690