お知らせ Notice
【ひと】 NGK(株)執行役員 知多事業所長 デジタルソサエティ事業本部 金属事業部長 夏目 欣秀 氏
2026.09.30なんでも技術で変えていく、NGK
今年4月1日、日本ガイシ㈱は、NGK㈱へ社名変更した。その背景には将来の成長分野を見据えた事業構成の転換、海外売上高が伸長し、事業展開のグローバル化が加速する中、海外で広く浸透している『NGK』に社名を統一しようという声が、海外の従業員を中心に高まっていた。がいし製品の主力生産拠点である知多事業所もこれに伴い、独自のセラミック技術で培った強みをさらに磨きながら、成長分野へ向けた人員体制の移行を、来年から本格的に進めていく。夏目欣秀氏は、入社以来32年間の大半を知多事業所に勤務してきた。その豊富な経験を活かした手腕に期待が寄せられる。
「NGKはセラミックスの会社ですが、金属素材も扱っており、私は入社以来、一貫して金属事業に携わっています。私が大学に入る頃、新素材としてファインセラミックスが注目され始め、素材の世界に興味を持ちました。さまざまな素材が持つ結晶組織の美しさに心を奪われてしまったのです(笑)。特に金属素材の幾何学模様は魅力的で、子どもの頃から好きだったプラモデルや城などの造形美への興味の延長線にあるような気がしています。金属が温度や加工方法によって結晶組織を変化させる様子を、写真で記録する構造研究は本当に楽しく、卒業時の研究テーマも当時世に出始めた形状記憶合金でした」
1990年初頭に電子化が進み、その後パソコンやスマートフォンの普及で、電気・電子部品などに使用されるベリリウム銅合金の需要は急速に伸びていった時代だった。入社後は品質改善、生産性改善、コスト低減等を目的とした研究に取り組み、工場の技術改善を進めながら生産性の向上を図ってきた。また、ベリリウム銅合金特性を柔軟にカスタマイズし、お客様の要求に、よりスピーディーかつ的確に応えていくことも求められた。その中で上司から「走りながら考えよ」と言われ、試作、確認、改善を繰り返しながら、歩留まりを上げることを目指した。今では生産能力を当時の4倍ほどまで高めることができた。
「事業には成長段階があり、一般的には立上げ期、成長期、成熟期、安定期という流れをたどります。試行錯誤しながら失敗と改善の積み重ねでしたが、若い頃に立上げという時期に関わり、やり甲斐もある毎日でした。現在は安定期に入り、業務のマニュアル化や標準化が進み、決まった手順で運用できるシステムが整っています。データを活用し、分析をしてそこからより良いものを生み出しています。そうした環境の中で、特に若い社員にどのように仕事のやり甲斐を感じてもらえるかが、私の役割です。DXを積極的に活用しながら、私の時代とは異なるアプローチで新しいことに挑戦し、成果を上げることで自らの成長を実感し、それを仕事へのやり甲斐に繋げていってほしいと思っています。AIと人間の経験知をうまく組み合わせることで、より確かな判断と成果につながると考えており、私自身もこれまでの経験を振り返りながら、アドバイスを送るようにしています」
フランスの製造販売拠点「NGKベリルコフランス」で、7年半ほど生産性を上げるために技術者として勤務した。その経験は貴重な財産になったが、1年間は『全く言葉が通じない』という大きな壁にぶつかった。5分伝える内容を30分ほどかけて辞書を引き、原稿を書いた。仕事中、会議でも、昼食時にも何を話しているか分からず、ひたすら耳を傾けた。帰宅後にそれらの言葉を反復しながら眠るまで勉強を続けた。その努力が3年目からの語学力の飛躍につながった。
「日本人は2人だけで、他は全員フランス人。言語の壁を乗り越えて『次はこのように実験条件を変えてほしい』と説明しても、彼らも自分の主張だけは断固として譲りません。意見が食い違えば何時間でも議論を交わす、そんな日々でした。シンプルに伝えることを意識するうちに、一番大事なことは何かを考える習慣が自然と身につきました。相手が何を考え、何を求めているのかをまず理解した上で、自分の考えを明確に伝えることを、今も心がけています」
時代の要請に応じて求められてきた様々な課題にも、知恵と経験、たゆまぬ努力によって克服してきた。時代が急速に変化する中、同事業所もまた、これまで培ってきた独自の技術力を基盤に、柔軟に自らを変化させる局面を迎えている。
「社員一人ひとりは仕事に愛着があり、培ってきた技術力や経験にプライドを持っています。だからこそ、時代の変化の中にあっても安心してやり甲斐を持って働ける環境をつくっていきたいと思っています。自ら考え、主体的に職務に取り組む体制は整っています。企業理念に掲げる私たちの使命は「社会に新しい価値を、そして幸せを」。セラミック技術を核にして、社員みんなで新たな挑戦の一歩を踏み出すことが大切です」
なんでも(N)技術で(G)変えていく(K)。次なるステージは始まったばかり、さらなる高みを目指して挑み続ける。
●ちょっと一息●
言葉の壁を克服するまでが大変だったフランスでの生活でしたが、慣れてしまえば楽しい経験もたくさんできました。1時間半ほどかけて一緒に食べる昼食の時間は苦痛でしたが、今ではいい思い出になっています。フランス国内の世界遺産を巡ったり、スペイン、ポルトガル、イタリア、スイスなどにも足を延ばし、さまざまな名所・旧跡を訪れました。現職に就いてから2度ほどフランスに出張で行く機会があり、かつての仲間と再会でき、楽しい一時を過ごしてきました。
今も旅行やゴルフに行きたいのですが、ゆっくり時間が取れないのが悩みです。この間は2泊3日で北海道の温泉巡りをしてきました。ゆったりと湯に浸かるのは最高ですね。
1968年豊川市生まれ。名古屋市在住。94年京都大学大学院金属加工学専攻修了。同年日本ガイシ㈱入社。知多事業所金属事業部配属。仙台営業所、知多事業所勤務。NGKベリルコフランス赴任を終え、2008年知多事業所に帰任。22年現職。半田商工会議所常議員。