2023年11月29日(水)
幼い頃から遊んだ祖父母の家は、天明8年(1788年)から続く造り酒屋(伊東(資))でした。3人兄弟の長男だった僕は子どもの頃は跡を継ぐんだと何となく感じていましたが、名古屋に住み野球に熱中していたので、休業そして清酒製造免許を返上した時(2000年)もあまり現実味はありませんでした。そんな僕が今ここで酒造りをしているのは2014年、祖父(伊東基夫氏、当所10代会頭)の死がきっかけでした。
亡くなった際、通夜の日まで蝋燭の火が消えないよう交代で見守る風習がありますが、自分の番に祖父が眠る傍で冷蔵庫で14年間保管されていた「敷嶋」を飲み、その凛とした味わいに感動するとともに、200年以上酒造りをしてきた伊東家という家を考え始めました。代々、酒造りを通じて地域に影響力があったことは地域の方々から聞いていましたが、実際には大人になって初めて感じました。ただ、酒造りを止めてからは、伊東家として地域に残るものが古い家屋しかない。そのため、まずはこの家を残したいと考えました。そして、酒を造るために家を建て、蔵を作ったのだから、まずは建物というハードありきのビジネスではなく、『酒造り』というソフトをビジネスの幹として成り立たせた上で、その他のコンテンツを枝のビジネスとして行い、建物を存続させるのが本筋ではないか、という考えに至りました。
4年後に脱サラし、他の酒蔵で修行した後、2021年12月から自社蔵で製造を開始し、翌年6月までにタンク15本の酒を製造。『敷嶋』を復活させ第一歩を踏み出しました。構想からの7年間は長かったような、アッという間だったような気がしています。清酒製造免許の
取得、土地の買い戻し、設備の導入など、ゼロからの出発は考えていたより大変でしたが、多くの方に力添えをいただき、実現に至りました。地元亀崎での祭や祝いごと、親戚の集まりなどで「敷嶋を美味しく飲んだ」と言われる方も多く、その言葉が励みであり支えでした。始める前や開始当初は、将来の不安や期待など考える暇もなく時間に追われていました。一番不安なのは『今』と感じられるのは、少し余裕が生まれたという証拠でしょうか。製造は自分を含め5人程で行っていますが、経理、人事、プロモーション、営業と全て今は自分でやっています。全業務を理解したいという気持ちもあり、今は無理をしています(笑)。
お酒にも様々な味がありますが、敷嶋は食中酒として飲んで頂きたいお酒です。僕自身、昔から外での飲み食いをしていましたが、その中で『食と酒のペアリングに感動する体験』に出会いました。おそらく、あの時感動した体験は一生覚えているでしょう。敷嶋もそういう場面にいてほしい。そして『ご飯を食べながら酒を飲む幸せ』という文化を創り、200年後に、食の傍にある定番酒となってほしいと思っています。
醸造業が盛んなためか、この地域では旨味が濃厚な食べものが多いです。ずっとこの地域に住んでいらっしゃる方には意外かもしれませんが、アナゴ、ふぐ、貝などの干物は知多半島だけの文化です。このような旨味がギューと濃縮された食をより膨らませるためには、旨味だけでなく、苦味や渋み、酸味も必要で、かつ味の骨格がしっかりとしたお酒が必要です。しっかりした骨格を保つには必然的にアルコール度数が高くなりますが、そのアルコール感がなく、美味しく飲めることが敷嶋の特徴だと思います。また、開封してから、4日目くらいから味がまろやかになり、1か月たっても美味しく飲めます。また、生酒や純米大吟醸も長く楽しめ、純米大吟醸は開封後、数か月経っても旨さの最大値を更新していきます。生酒はできれば冷蔵庫保管をおすすめしますが、是非その過程を楽しみながらお飲みください。
まずは敷嶋を復活することが目標でしたが、今後はいいお酒を造ることを前提として、この建物を残すために活かしていきたいと思っています。12月には蔵内にレストランがオープン予定です。更に来年1月は素敵な庭と共にカフェビストロが開始予定です。また、近々販売店も併設しますが、地域の皆様にはお酒は引き続き酒屋さんでお買い求めいただければ嬉しいです。
また、若い方々に「酒蔵が地元にあり、その酒蔵の酒は美味しい」ことを知っていただきたくて、来年の『二十歳の集い』の日に(1月7日)『蔵シカルmarché』を開催します。沢山のハンドメイド作品や美味しいご飯、ワークショップが楽しめるイベントです。新20歳の方、そして晴れ着でお越しの方には1杯振る舞い酒がございます。お酒が好きな方、素敵な商品や美味しいものと出会いたい方、ぜひお越しくださいませ。蔵に囲まれた特別な空間も必見です。また、4月20日には昨年に引き続き『亀崎酒蔵祭』を予定しています。これからもたくさんの仕掛けをしていきますので、皆様何卒よろしくお願いいたします。
■半田市亀崎町9-108-1
■TEL.29ー1125
2023年10月31日(火)
今回訪問した会員事業所は、半田中央インター近くの長閑な場所で自動車鈑金・塗装業を営んでいる「オートボディ元気(ゲンキ)」。駐車場には修理を待つ車が並び、奥には塗装ブースを有した鈑金工場がある。事務所を訪問すると奥さんの敦代さんと愛犬のペレ蔵くんが迎えてくれた。敦代さんは事務と洗車が主な役目。裏方の仕事をこなし、ご主人を支えている。
店名の「オートボディ元気」は、代表の新美元気(モトキ)氏の名前が由来だ。元気氏は学生の頃からのバイク好きが高じて鈑金塗装業界に足を踏み入れた。「その業界に入れば、バイクを自由にカスタマイズできる道具がたくさんあるから」と笑いながら話してくれた。しかし、入社してからはそんな余裕は全く無く、とにかく朝から晩まで作業に追われた。その結果、鈑金・塗装ともに数多くの経験を積むことができた。その後、将来的な独立を考えるようになり、自動車整備工場に身を移した。そこでは、事故車が入庫されてから鈑金・塗装を含む修理完了までの一部始終に携わることができ、ドア部分などのボディやシートなどの内装部品の取り外しや、組み付けなど、独立するために必要な過程を勉強した。また、カーディーラーや損害保険会社の担当者など、対人の場にも同席し、顔と名前を売ると同時に営業の手法や人間関係を築いていった。約12年間、独り立ちに必要な技術と人間関係を深め、平成20年3月、現在地に念願の鈑金工場を立ち上げた。
「お客様からお預かりした大切な車をいかに綺麗に、いかに車にストレスを与えることなく施工できるかをいつも考えながら作業している」と元気氏。常に業界雑誌で最新の情報を入手したり、部品メーカーの担当者と普段の会話から業界の動向などを聞き取り、今、自分にできることを考え、自身の技術をアップデートしている。一つの例として、5年ほど前から塗料は水性塗料を使用している。知多地
域の多くの同業者は油性塗料を使用しているが、元気氏は環境に優しい水性塗料を使用している。世界的に塗料は油性から水性へ移行しており、時代の流れに応じて水性塗料の使用に踏み切ったのだという。
独立してから15年が経過した。独立後間もなく前勤務先の社長の口利きで仕事を受けたり、その後も仕事は途切れることなく受注している。これも元気氏の人柄と仕事に対し妥協せず常に新たなことに取り組む姿勢からなのであろう。通常の事故車の修理はもちろん、今では元気氏の高度な技術力を頼りに新車の鈑金・塗装の依頼もある程だ。
プライベートでは、地域の活動や祭礼にも参加し、趣味のサッカーで平日夜の練習、休日の試合で汗を流し、幅広い年齢層との繋がりを築いている。料理好きで、学生の頃の夢が料理人というほど腕には自信があり、その味は奥さんからも太鼓判を押されている。「仕事もプライベートも楽しく」をモットーに日々を送る元気氏をこれからも応援していきたい。(取材:竹内圭志)
【住所】半田市平井町4-12
【代表】新美元気
【創業】平成20年3月
【営業時間】 9:00~18:00
【TEL】 27-8281
【定休日】日曜日
2023年10月31日(火)
非日常の空間で世界の料理を
非日常の空間で世界の料理を
多国籍料理の店をオープンしたのが2020年4月、コロナ禍を何とか乗り越え、物価高戦争の中で戦いながら、充実した日を過ごしていますが、かつての僕は自分のダメさを思い知る場面が多くありました。そんな自分を変えたくて、大学の時に(生まれた東海市から)折りたたみ自転車で京都に行き『僕にとっては無謀とも思えるような旅も、やれば出来るんだ』と自信が生まれ、翌年ママチャリでお遍路さんとして四国を一周しました。全行程、野宿という旅の途中で、人生の師と感謝している世界一周をした人と出会い、人生観が変わりました。今もその人からパワーをいただいていますが、人と少し違った生き様に憧れ、世界一周が夢になりました。
とは思っても堅実に(笑)、靴を扱う小売企業に就職しました。働いているうちに、自分で作り出したものを提供してお客様に喜んでもらいたい、当時ステータスだったカフェをやったらカッコいいかな?知多半島にオシャレな店を開きたいと飲食の世界に挑戦しようと決意しました。大学時代にトンカツ屋さんでアルバイトをしましたが、包丁すらまともに握ったことがないのに、またまた無謀なことを考えました(笑)。
その想いが募って退職して、バックパッカーとして世界一周の旅に出ました。それまで日本の常識、与えられた情報の中で生きてきましたが、「自分の物差しで物事を見ないこと」を意識して旅し、視野が広くなったような気がしています。家でのカレーしか知らなかった僕は、海外のスパイスの効いたカレーは新鮮で、スパイスを活かした料理の美味しさ、面白さ、素晴らしさに衝撃を受けました。僕が学生時代に旅に出ていたら、今その時に受けた影響に左右された生き方をしているかも知れませんが、社会人になり、店を開こうという目標を持って旅しているので、そのための情報収集をしながら、その時の旅のテーマ『楽しむ』ことに全力を注ぎました。
結局、1年間で30ヶ国ほど周り、旅の後半では早く帰国し店を出す準備をしたいと焦っていました。会社を辞める時も勇気がいりましたが、この頃友達はバリバリに仕事をしているのに、スタートラインにも立てていない僕は不安の中にいました。帰国後に本格的に飲食店で10年ほど修行し、たまたま出会ったこの古民家に惚れ込み、古事記から見つけた香辛料の意味合いを持つ「HAJIKAMI」としてオープンしました。香辛料のようにピリッと刺激的で、非日常の空間を味わっていただきたいという想いを込めています。今はハジカミ生姜があるので、馴染みを持っていただける店名かも知れませんね。カフェから多国籍料理の店に変わり、シナリオにはなかった(笑)妻と一緒にスタートすることに責任は伴いましたが、やり甲斐も大きかったですね。
目前に緑が広がる開放的な店内に、テーブル席、ソファー席、バーカウンターをご用意し、ハーブ類を使い、スパイスが効いた世界の料理を提供しています。世界に美味しいものがあることを知って欲しい、それぞれの国の食文化に興味を持っていただきたいと思い、その国の食材を使い現地の味を再現しています。旅先でのメモと睨めっこし、レシピ本や現地の調理法を参考にしながら、今までの経験をベースに、僕らしい店作りができたらと考えています。店内には旅した国
の雑貨や民芸品をディスプレイしています。余談ですが、お金のない旅の中でもオシャレをするために10個くらいの帽子を持ち歩いて、その日の気分で被っていました。そんな帽子も店内に置いています。異国情緒を感じていただけたら嬉しいですね。世界各国を旅して、僕なりに感じた想いが店内のあちこちに散らばり、この店の原点になって
います。
ランチは『世界のカレー』として、タイ、北インド、南インドと色々な種類のカレーを提供しています。食後には、ラテアート(latteone2021 3位入賞)、デザート等々をお楽しみください。また、ディナーは多国籍料理とクラフトビール等、シーンに合わせてご賞味ください。イベント時にはキッチンカーで出店もしています。見かけましたら、気軽に声をかけてくださいね。古民家だから女性のお客さまというイメージを持たれるかもしれませんが、お一人での男性客のリピーターもいらして、幅広い客層の方に来店いただいています。ありがたいことです。
世界一周をする。自分らしい店を持つ。この二つの夢を叶えた僕は、知多半島に今までない僕にしか出来ない店を展開し、飲食を通して盛り上げたい!と新たな夢に向かって挑戦中です。
■住所:半田市岩滑中町4-146 ■ 営業時間:ランチ 11:30~15:00(14:00 L.O)
ディナー 水・木 18:00~21:00(20:00 L.O)、金・土 18:00~21:30(20:30 L.O)、日曜 11:30~16:00
■ 定休日:月・火曜 ■TEL.89-6333 ■ https://www.instagram.com/hajikami_handa/
2023年10月12日(木)
10月28日(土)・29日(日)、市内10地区31輌の山車が6年ぶりに勢揃いする「第九回はんだ山車まつり」が開催されます。
店舗の前を山車が通るため、山車まつりを満喫するのに絶好のスポットです。
現在、両日について2階個室の予約(時間帯別)を受付中です。
団体での利用も可能ですので、同僚の皆さんでご利用いたかがでしょうか。
<詳細>
【お部屋代】
大人(中学生以上)1名につき2500円(オードブル付き)※別途お食事のワンオーダーが必要となります
【お部屋の種類・利用人数】
漁1(完全個室掘りごたつ)定員大人最低5名以上から最大8名さま
漁5(和室テーブル席)定員大人最低12名以上から最大20名
漁6(和室テーブル席)定員大人最低8名以上から最大14名
漁7(和室テーブル席)定員大人最低8名以上から最大14名
漁8(和室テーブル席)定員大人最低8名以上から最大14名
※ご利用人数やご希望の時間帯によって要相談
【時間帯】
Aの部 11:30~13:30
Bの部 14:30~16:30
Cの部 17:30~20:00
予約・詳細はこちら
https://www.uotaro.com/handa_sushi/event-festival/
※予約は専用フォームからの申込になります。
複数の希望状況との調整や説明事項が多数ある為、お電話でのご案内、予約希望の受付は致しかねます。
予約の確定やご相談につきましては、改めて担当より折り返しのお電話を致します
(折り返し迄には数日以上お時間を頂戴いたします)
代表者/梶山美也
住所/半田市中村町1-33-2
TEL/0569-89-7800
HP/https://www.uotaro.com/handa_sushi/
2023年9月29日(金)
株)ナカノ工業は、創業50年を迎え、次代に向けて新社屋と新工場(第4工場)が完成し、新たな事業に取り組みはじめている。
同社は、昭和48年半田市泉町にて中野工業所として、現代表である中墅節藏氏が開業。昭和63年に半田市乙川末広町に工場移転。平成4年9月に事務所を完成し、平成6年11月に(有)ナカノ工業と社名変更、法人化し、その後、業務拡大により第2・3工場を完成。平成18年5月(株)ナカノ工業に移行。今年7月には創業50年に合わせて新社屋と、新規事業を展開する第4工場が完成した。尚、同社は半田商工会議所創立130 周年記念事業表彰にて、創業50年事業所顕彰を受賞。
同社はレーザー加工機を2台保有してステンレスをはじめとする産業設備機器などを製作している。精密板金・製缶を中心に金属加工において豊富な実績を持ち、顧客の多様化・複雑化するニーズに迅速に対応できる環境を整えている。受注した商品は、依頼図面より展開図を作成、レーザー加工された部材などを曲げ加工・各種溶接等を行い、様々な要望に応じ製作。単品~複数ロット、小型~大型(単体5~10t・大型トレーラー積載可)まで幅広いニーズに対応。また、設備・技術者ともに充実
しており、短納期での製作・現場据付等にも対応可能。
節藏氏は「新工場が稼働した事により、手のひらサイズの加工品から大型製缶、20tのプラント組付けができるようになりました。現在30数社のお客様より仕事をいただいており、高品質・納期厳守を徹底しお客様より信頼をいただいています。既存のお客様を大事にしながら、新規獲得にも力を注いでいきたいと
思います」と語られた。
そして、創業50年を機に『地球環境に優しい』をテーマに、新規事業「GX-PLANT事業」を立ち上げ、取り組みはじめている。GX-PLANTとは、廃プラから油分を回収し、その後、廃プラ回収油や重油と、植物生油をプラズマナノ反応させる事により、カーボンニュートラル燃料化する事業である。この事業は、国が進めるGX(グリーントランスフォーメーション) を通じて脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長の3つを同時実現に向けたものである。特に、カーボンニュートラル燃料とは、製造から使用までの全過程で大気中のCO2濃度を増やさない燃料のことである。カーボンニュートラルは排出したCO2と吸収したCO2 の量が同じになるため、カーボンニュートラル燃料は使用した時のCO2排出量と、生産時に大気中から吸収するCO2が差し引きゼロになる燃料、一言でいうと『CO(2 二酸化炭素)から燃料 を作る』こととなる。GXーPLANT事業は、来年には実用プラント1号機が完成し、1日10t処理できる設備導入が予定されている。
節藏氏は、「現在地に移転して40年、以来毎朝、始業時間である朝8時よりラジオ体操をしています。体をほぐしストレッチをして朝のミーティングをして仕事に取り組む。その始業前のルーティーンは心と体をほぐし、仕事に取り組む士気を高めてくれているように感じています。また、2~3年後には、長男(正和氏)に事業承継を考えています。GX-PLANT事業を重点的にすすめ、より社会に貢献する会社にしていけたらと思っています」と語られた。今後も同社の発展に期待したい。(取材:竹内稔晴)
【住所】半田市乙川末広町16番地 【代表】中墅節藏
【創業】昭和48年 【TEL】23-4377