2024年12月27日(金)
市内乙川地区を商圏の8割とする大工職人の柏原正義氏。㈱柏原建築の代表取締役である。氏は、けんか祭りで有名な乙川地区でやんちゃな学生生活を過ごしていた。その後、大工の世界に入り、新居町の竹内建築㈱にて7年、平地町の榎本建築㈱にて4年、阿久比町横松の水野建築にて2年の修業を経て、独立、現在に至る。修業先の親方とは、今でも酒を酌み交わす。竹内建築㈱では、墨付けや家の骨組み、榎本建築㈱では、デザイン性や銘木への拘り、水野建築では、山車修復など細部へのこだわり、をそれぞれの親方から学んだと氏は言う。
独立後すぐから順風満帆だったとは言えなかった。手間受け仕事や、建売住宅の外注対応等でなんとか生活していた。転機となったのは、自宅を建築したとき。自身の腕やデザイン性を魅せる大きな宣伝になったと言う。しかし、最大の宣伝になった自宅は、家族が生活をしている中での施主と打合せが発生する。これは、家族も施主も互いに居心地が悪いのではないかと考え、数年後に、事務所と併設する作業場を建築。自宅・事務所の建築を契機に、地元の人に認知された。展示場でもあり、自身の名刺として最大の宣伝効果になったと氏は言う。今では、施主の需要に応じながら、リフォームを挟みながらも、年間で新築工事を平均4棟手掛ける。氏は、「施主の懐具合に合わせた工事を手掛けている。仕入れる資材も価格が上昇しているが、賃金が上がっていないこの時代に、ウチに任してくれる施主の予算に合わせたい」とモットーを掲げる。作業場には、最近の大工には珍しく木工具も備えているため、要望に応じた木材加工も可能とする。
今は常駐大工の他、娘さんの旦那さんを交え、施工する。氏の修業時代は、親方から厳しい言葉を掛けられることもあったと言うが、親方のことは今でも尊敬していると言う。しかし、現在は職人の世界と言えど、当時のような指導はできない。○○ハラスメントとなるからである。しかし、娘さんの旦那さんには、「甘い考えを捨てろ、最初は教えるが次から同じミスはするな」と時折厳しい指導も行うと言う。自分自身が苦労しながら築いた職人としての土台があるからこそ発せられる言葉である。施工の際には、電気工事や水道工事の他、内装工事や塗装工事も、ほぼ地元乙川地区の職人が協力しており、さしずめ【チーム乙川】である。
氏は、乙川地区西山の保存委員も務めており、西山神楽車で、金物や、せり上げ部分に歪みが出ると、無償で修復を手掛ける。ただし、彫物は彫師の価値を下げるため、触らないという。彫師に敬意を表する同社事務所には、彫常が手掛けた宝尽くしが施された欄間が掲げられている。骨董品店の店主が、それだけ彫物が好きならば、と譲ってもらった逸品である。
これからの展望を、氏に尋ねると「こつこつ現場に出て、最後まで大工でいたい」と返ってきた。乙川で生まれ、乙川に育てられた地元の大工。最後まで地元の大工職人として全うするため、今日も現場に足を運び、惜しみなくその腕を振るっている。 ( 取材:榊原鉄平)
【住所】半田市一ノ草町208‒82
【代表】柏原正義
【営業時間】8:00~18:00
【定休日】不定休
【TEL】23-8204
○許可登録/愛知県知事許可(般-4)第68082号
2024年12月17日(火)
いつでも新鮮な牡蠣が食べられる店「牡蠣居酒屋おいすた」では、新鮮な生の牡蠣はもちろんだが、カキフライやカキ天ぷら、串焼き、牡蠣鍋、オイル漬け、アヒージョなど定番からアレンジまで様々なメニューがある。 体にとって必要不可欠な栄
養素がたっぷりと含まれており、「海のミルク」と呼ばれている。栄養食品と言える牡蠣に多く含まれているグリコーゲンとタウリンは「肝機能の強化」、ビタミンB12や葉酸、鉄、銅その他のビタミン、ミネラル類が多く「造血」に必要で欠かせない
成分である。さらに、亜鉛も多く含まれており、風邪の予防に効果的で「免疫力強化」などの働きや、「疲労回復」、「美容
効果」にも役立てられている。
美味しい牡蠣料理を楽しい空間で過ごせる店「牡蠣居酒屋おいすた」の代表である四谷氏は、多角化経営を見据え当店を開店した。持ち前の明るさと人当たりの良さで、多くのお客様から愛されており、交友の幅も広く、中心市街地の賑わい創出の一翼を担っている。個室の座敷を使っての宴会利用は最大30名まで、周りを気にすることなく楽しむことができ、貸切の場合は65名まで利用することができるこだわりの空間が、10月リニューアルした。
目玉としては、カウンターの壁が20cmほど高くなり、1人でも居心地が良い環境を作ることができた。1人では入りにくい
との意見が多かったため、その点を解消し、1人で食事したい方や女性の1人客が入りやすい仕組みとなった。また、座敷が掘りごたつになったことで、個室希望だが足が下ろせない理由で来店されないお客様の集客が期待できるようになった。
全てお客様の声から生まれた取り組みであり、一層の満足度向上につながっている。また、牡蠣以外にも豊富なメニューやアラカルト料理、牡蠣無しのお手軽コースから牡蠣を贅沢に味わえるコースなど、用途に合わせたコースを用意しており、牡蠣が苦手な方でも当店を楽しんでいただけるよう、常にお客様第一主義を掲げている。
チェーン店のような騒がしい環境ではなく、少し落ち着いた雰囲気の店内で、気の利いた接客、ジョッキで豪快に提供するのではなく、泡まで美味しい入れ方にもこだわったビール。牡蠣に合う数種類のワイン・ウイスキー・日本酒・果実酒・焼酎・ノンアルコールなどのドリンクなど、こだわりはメニューにも出ている。
知多半島では珍しい牡蠣を専門に取り扱う店「牡蠣居酒屋おいすた」では、名古屋まで行かずとも、たくさんの種類の
新鮮な生の牡蠣、焼き牡蠣、その他の牡蠣料理を食べることができる。牡蠣の美味しさを地元の人に伝えるために、今日も
「牡蠣居酒屋おいすた」は賑やかに灯っている。
( 取材:中満信宏)
【住所】半田市泉町24 みどりハイツ半田1F
【代表】四谷大栄
【営業時間】火~木、日、祝日17:30~23:00( 料理L.O. 22:00)
金、土、祝前日 17:30~翌0:00( 料理L.O. 23:00)
【定休日】月曜日
【TEL】84-0332
2024年11月1日(金)
乙川にある自家製手打ちうどん「味乃屋」、お客さんから「のどごしがいいよね」と評判の店である。それもそのはず麺作り
(うどん・きしめん)を一貫してご主人が行っているからである。毎日の繰り返しの中で仕上がりが一律になるよう微調整しな
がら仕込みをしている。お客さんの満足そうな顔に労力も報われると言う。アジ、サバ、カツオ、イワシのブレンドした出汁、甘
辛く味付けした油揚げ、煮物の小鉢等はこの地に合った味付けで手作りしたものを提供している。「うどんと出汁」の相性は
抜群に素晴らしい。熱いものは熱く、作りたてが一番。
先代である父が昭和36年10月に知多半田駅前にて創業。当時から手作りにこだわり地元に愛されていたが、平成10年に駅前開発と店舗老朽化のタイミングで現在地に移転してきた。近くには大型商業施設もあり多くの人が行き交う中での新天地で再出発となった。程なくサラリーマンを辞めた現代表の充氏が加わり、これからという時に父が突然、他界してしまった。お店を守るため母、奥さんと共に必死になって頑張り続けられたのも昔からの常連さんに「昔と同じ味、美味しいよ」と太鼓判を頂いているからだ。父から受け継いだメニューは沢山あるが、減らすことはあっても増やすことはないと言う。営業中は集中力が欠かせないので閉店時にはヘトヘトになる程である。
座敷を含め24席。ご主人は麺作りに専念し、奥さんは揚げ物を担当。定食の天ぷらは海老、茄子、さつまいも、ピーマンな
どを揚げたての熱々で提供。食欲が増してくる。これから寒くなる時期にはやっぱり食べたくなる味噌煮込うどん。鶏肉、油揚
げ、蒲鉾、長ねぎが入り、熱々の土鍋で提供される。八丁みそと白みそのブレンドで鶏肉の出汁も入って味わい深く美味しい。
うどんはお好みで固さが選べる。味噌煮込うどんと言えばやっぱりこの食感「かため」が好みの方は煮込み専用の生麺。
「やわらかめ」が好みの方は通常の茹麺を煮込み、もちっとした手打ちうどんの食感を味わえる。他にも乙川名物の「しっぽく
うどん」は味付けした里芋、人参、しいたけ、ねぎ、鶏肉をのせた昔から伝わるご馳走うどん。特に乙川祭りで食されてきた。
また、ごはんを、かやくご飯に変更することもできる。どれも美味しくメニュー選びで頭を悩ませてしまう。
日頃の多忙な時間から無心になりたい時、充氏は釣りで師崎まで出かける。釣ってきた魚をまかないに出して従業員さんにも喜ばれており、一石二鳥となっている。奥さんは以前勤めていた会社の同僚であり、今でも仕事のパートナーとして欠かせない存在である。今後もそれぞれの役割を大切にこれからも地域の人に愛されるお店として頑張り続けていく。 (取材:中村真由美)
住所/半田市乙川新町1-9
代表/杉浦 充
創業/昭和36年10月
営業時間/11:00~14:00 17:30~20:00
電話/21-6038
定休日/水曜日 ただし日、月、火は夜の部休み
2024年10月2日(水)
今回訪問させていただいた会員企業は、1899年(明治32 年)創業の老舗で、現在半田市更生町に店舗を構える有限会社大和屋家具店。そこで現在4代目として活躍している淺井泰博社長より話を伺った。
同社は、淺井社長の曾祖父、淺井芳平氏が当時、名古屋尾頭橋で家具製造・販売業を営んでいた「大和屋」から暖簾分けにより、半田市成岩の地にて創業した。その後、何度かの移転を経て大正時代には現在の場所に移転し、現店舗は、平成14年に
旧店舗から建て替えられた。現在、創業当時に行っていた家具製造はしておらず、家具やインテリア雑貨の販売、家具のレンタルが主な事業内容である。同店は天然木を使用した、いわば質の高い家具を取り揃えている。「家具は長く使っていただくことで味わいが出ること、またそうすることで使っている人の暮らしに寄り添っていくもの」と淺井社長は家具への想いを伝えてくれた。そのためスタッフがお客様と接する時には、商品のこと、使い勝手のこと、材質のこと、そしてメンテナンスのことをしっかり説明し、お客様のニーズにあった家具、更にはお客様のライフスタイルに合わせたコーディネートを提案することで、より豊かな暮らしの実現にお手伝いすることを心掛けている。
~家具ブランドSOLIDとの出会い~
創業120年の節目を迎えた2019年、家具ブランド「SOLID」の取り扱いを始める。「SOLID」の製品は、100%天然木無垢材で自然素材を多く取り入れた家具である。無垢材はウォールナットやブラックチェリー、レッドオークの3 種を揃え、ソファやチェアに使用される革も天然素材が使用されている。無垢材、張地、形状などお客様の好みに合わせた家具を提供できるクオリティの高さが実現されたものであり、淺井社長が一目惚れしたブランドである。同社のSOLID商品取扱いに際し、関係者からの理解・協力を得ることができ、また売り場づくりには同店スタッフが夜遅くまで付き合った。そして、同店2階の一部がSOLIDの商品が揃うショールームとなり、『SOLID CHITA』としてオープンした。
SOLID CHITAオープン以降、同社の商圏はこれまでの知多半島中心から、尾張から東三河に至る愛知県全体まで広がった。淺井社長は「ホームページやSNSで発信することで、お客様は遠くても良いものを求め来店される。私たちスタッフも丁寧な接客を心掛け、お客様に実際に見て触れていただき、納得の上お買い求めていただくことを心掛けている」と商品力だけでなく、おもてなしにも力を入れている。
~新たなロゴ、創業125年を迎え新たな出発~
2024年8月、店舗外装工事完了にあわせ新たな看板とともに新たなロゴがお目見えした。「Y」は、「U」と「I」からできて
おり、「U」は「あなた=お客様」、「I」は「(私)大和屋家具店」を意味している。「U」と「I」二つが揃い「Y」となる様は、「お客様を支える、寄り添ったご提案の場」である大和屋家具店を表しており、淺井社長の「お客様に寄り添っていくことで末永くお付き合いしていきたい」という想いが込められている。
今後の展望として、「都市圏にアンテナショップを出店し、SOLID商品をはじめ当店の取扱商品の認知度を高め、半田の店舗への集客を図り、会社を成長させるとともに街の活性化にも寄与していきたい」と淺井社長は抱負を語った。
(取材:竹内圭志)
住所/半田市更生町2-151-8 Y’sコート1、2F
代表/淺井泰博 創業/明治32年4月
営業時間/10:00~19:00 定休日/木曜日
電話/21-1012
URL/https://yamatoya1899.com
2024年8月30日(金)
【僕と社長】
「モノづくりを知りたい、伝えたい」
そんな気持ちでお邪魔したのは、港本町に工場を構えるセオ工業さん。
令和5年6月、それまで25年勤めた㈱間瀬工業(半田市州の崎町)から独立し、この場所(港本町)で事業を始めた。金属等の加工を行う、いわゆる町工場だ。とは言うものの、この場所は以前、㈱間瀬工業が稼働していた場所。13年前にこの港本町から州の崎町へ移転、しばらく使われていなかった工場。
移転後、州の崎町での勤務を続けた瀬尾さんだったが、今後について様々な想いを抱き悩んだ末、退職を申し出た。すると「この場所(港本町の工場)を使って独立しないか」と、社長から思わぬお声がけをいただいた。正直とても嬉しかった。「この会社で仕事を続けてきて、モノづくりが好きになり、長年お世話になった社長が僕の背中を押してくれている」この場所での独立を決意した。
【取り扱い内容】
取り扱い可能な材料は、鉄・アルミニウム・ステンレス・真ちゅう・銅・樹脂など。旋盤加工が可能な材料であれば何でも取り扱うことができる。加工の多くをNC旋盤で行うが、加工内容によっては汎用旋盤も使う。自動車部品をはじめ、美容グッズの部品など完成品の行き先は幅広い。
お客様から図面を受け取ると、それをパソコンに落とし込み、工具を選び、旋盤のプログラムを組み、刃物の動きを調整する。これがNC旋盤加工の流れだそうだ。「全てお一人でやるのですか?」と驚くと、「普通のことですよ」と瀬尾さんは言う。とても緻密な作業の積み重ねと感じないのはこの道27年の職人ならでは。この工程一つひとつがモノづくりなのだ。
【やりがい】
仕事を通じて一番嬉しいことを伺うと「きれいな品物だね」とお客様から言っていただけることだそう。万が一、お客様に心配事があっても、打ち合わせや調整をすることで、不良が無いよう最善を尽くす。
セオ工業さんのウリは「高品質・短納期・経験」。品質には妥協を許さず、自信をもって納品できるものだけをお届けする。品質と併せて短納期も心掛けている他、一(図面)を受け取るだけで、十(完成品)にしてお届けできる経験値にも安心感がある。
【これから】
独立から1年が過ぎたが、最近は社会情勢に影響され、順調な時ばかりではない。そんな時こそ焦らず、お客様とのコミュニケーションを図り、また新たな販路を見出すべく積極的に動くよう心掛けている。(正直、とても焦りますが、その気持ちをグッとこらえて踏ん張っています、と笑う瀬尾さん)
持ち前の明るさと誠実さが、この地域のモノづくりを支え、その楽しさを教えてくれた。延いてはそれが品質にもつながるという、まさにモノづくりの奥深さと魅力を発信してくれているようだ。(取材:加藤由香恵)
住所/半田市港本町2-119
代表/瀬尾聖史郎
創業/令和5年
TEL/090-6463-2487